ゆうゆう、ネコ騒動


「ネコさんたち、ありがとう。」

<DAY 1
とある初夏の月曜の朝、当フリースクール2階に上がったこども、スタッフが耳にしたのは、
子ネコの鳴き声らしきもの。どうやら頭の高さから聞こえてくるらしい。
天井かな?窓の外かな?屋上かな?気にはなりながらも、時間は流れ、
午前中の活動、昼食、午後の活動、おやつへと進んでいく。


しかし、やはり気になる。どこだろう、なんだろう、なんでだろう。そして、どうもよく聞いてみると
エアコンダクト用に作られたパイプの、室内出口付近、そこから子ネコらしき鳴き声が聞こえる。
間違いないだろうと、ダクトのふたをA君が椅子に登って開ける。


「ネコがいます。」

「うん、そうだね、ミャーミャーなく犬はいないし。」

などのやりとり(?)をしながらダクトパイプ出口ぎりぎり通るか通らないか、
いっぱいいっぱいの大きさで子ネコの顔が見える。
目がつぶれているように見えた子ネコは、ちょっとホラーっぽかったので、Bさんがつまみだす。

そうすると、実はその奧にももう一匹いるではないか。二匹とも目が開いていない。
産み落とされて間もないであろう。
しかし、あるスタッフが二日前に2階に上がったときにはネコの鳴き声など聞いていないという証言。
とすれば、この、まだ生後数日か数時間という子ネコはまさに、ゆうゆうで発見される当日か、
せめて前日に産み落とされたことになるではないか!

時期は確定できたとしても、問題はエアコンダクトに入った方法である。ダクトは家屋の外につながっており、
そこをたどると実は太い導線の配線があるのみで、子ネコどころかネズミ一匹入る隙間もない。
つきつめていくと実はあと一カ所残っていた、子ネコなら入っていきそうな方法が。


探偵並の推理を利かせながら、ゆうゆうの人々が子ネコの一挙手一投足(ネコの場合は一挙足一投足かな)に
心を奪われるのに、長い時間は必要なかった。幼い動物に心躍らせじゃれ合う遊びに没頭するのはこどもの常、
実際の生存に必要なお世話を心配するのは大人の常。


毛糸玉を作って、ネコの遊び道具を早速こしらえる。目が見えないと目やにをとる。ミルクも自力で飲めないので、
スポイトを口に持っていて飲ませる、しかも一日3回。

翌日ではあるが、あっという間に子ネコ二匹がゆうゆうの「支配者(C君命名)」になる。

大人の常ではないが、さあて次はどうするかだ。まずは里親探し。これはとにかくヒトのネットワークを利用しなければ、
ネコのネットワークの利用は期待できない(と考えるのがヒトの常か、実はネコにはネコのネットワークが
もっとも効果的であることが後に判明する)。ここでご披露できないのは残念ですが、
携帯写真付きメールを載せてヒトネットワークにばらまく。


かたや育ネコ法。近所のペットショップに早速聞いてみる。生後4週間までは通常母親のミルクで育つらしく、
固形物は与えられない。しかもミルクの量は、体重にあわせてということで計量、410と320グラム。
小ささが想像できますね。


名前は「いち」と「に」となる。くろとフックなどの案もあった様子。

発見当日夜、あるスタッフが天井裏に何かいると気づく。これが親ネコであったろうということが後日判明する。



DAY 2
朝一番で、大きめの鳥かご、ケージをスタッフがわざわざ自宅から車で運び込む。
ネコを見たいがために、朝早くやってくるこどもたち。なかにはもう親に「ネコを飼って!」とせがんだものいる。
たまたまこの日はボランティアさんの都合がつきにくく、やじねこにたかる(?)こどもたちとわずかなスタッフのみ。
それでもネコたちのおかげで、まるでアニマルセラピー(スタッフ談)。平和でまったりとした時間が流れる。
「いち」と「に」は、すっかりゆうゆうでの癒し系存在となる。


スタッフによる代理母ぶり、目やにをとる、スポイトでミルクを与える作業は続く。
このままいけば人間性を持ったネコに育つのかな、それとも野生を失ったネコかな(コンラート・ロレンツの
インプリンティングという概念がある。動物は生まれた直後、スキンシップをし、
えさを与えてくれる存在を親と認識するというものである、余談)。
D君の作った毛糸玉でようやく遊べるようになるという成長ぶりをみて、皆が微笑む。




DAY 3
ゆうゆうお休みの日ではあるが、スタッフによる手厚い育ネコはあくまで続く。里親探しも引き続き。



DAY 4
午前中に親ネコらしき成ネコ(成長したネコ)が建物近辺にきているかもという証言があった。
それではということで、午後籠ごとベランダに出しておくという名案を実施してみることとなった。
その晩もカラスにおそわれるのではないかという不安、はたまたハクビシンにSARSをうつされたらなどの
杞憂に包まれながら(?)も、そのままにして朝を迎えることとする。




DAY 5
スタッフ登所。前日からベランダに残しておいた不安も抱えつつ、
ほぼ日課となりつつあった哺乳を行うべく、窓を勢いよく開ける。


いる、ちゃんと二匹。しかし、なんともう一匹!似たような柄の成ネコも警戒しながらこちらを見ているではないか!
いかん、驚かせてはいけないから、ヒトは全員退散の号令に、奧の台所に潜む。顔をのぞかせる。
あわてて隠れたため、子ネコの入ったケージをおいたベランダに通じる窓は開けたまま、
そこから成ネコがほぼ同時に顔をのぞかせる(爆笑)。


ネコ語を自由に操る(?)Eさんが親からの威嚇に果敢に挑みながら、
そして「しぃーっ、そんなにかーっといわなくても、出してあげるから待っててね」と話しかけながら
子ネコを一匹ずつ、しかも大きい方(410グラム)を先に出してあげるという心遣い。
重い方から先に運んだ方が親も楽だろうという優しさにきっと親ネコも猫の恩返しを考えたことだろう。


まずは一匹、テレビなどではよく見られるが、本当に首の上をくわえて自分の子どもをどこかへ運び出す。
そして二匹目も。無事に連れ出したところで、大きな拍手か安堵感かは、人それぞれ、ネコそれぞれ。
あっという間の出来事であった。


その後、三々五々、こども、スタッフが集まる。今週は、「ネコは?」が朝の挨拶の一部と化していたが、
返答に対して、驚きを皆隠そうとはしない様子・・・・「親のところに戻っていったよ!」


ところがところが、ネコがいなくなったことにがっくり来るだろうと思っていた大人たちをよそに、
親のところに戻って行ったことを実は大人よりほっとしていたこどもたちがいた。
ネコさんたち、ありがとう。。。


written by T.Abe & edited by T.Imamura

Ads by Sitemix